EDIT
祐天寺は、主に住宅の多い街ではある。しかしすぐ隣の駅に足を延ばせばそこは、中目黒。自転車をお持ちの方ならあっという間の距離である。散歩がてらに徒歩で行けない距離でもない。その祐天寺駅から10分ほど歩くと、そこにはコンクリートの直方体。無機質な印象の建物が佇んでいた。
入るとまず驚くのは、室内に光がたくさん射し込んでいることだ。外観から受けた閉鎖的な印象は、ものの数秒で裏切られてしまう。扉を開けてすぐ、玄関に当たる部分は例えるなら、それはまるでクレバスのような空間だ。外壁であるコンクリートの直方体の中に、縦長の真っ白な直方体が、地下から最上階の天井まで突き抜けるかたちでおさまっている。その内と外ふたつの立体の間にできる隙間や、中をくり抜いた空間を、うまく使ってそれぞれの部屋が構成されているのだ。氷河や雪渓にある深い割れ目には、氷のように透明感のある光が射し込む。玄関や階段にあたる部分は、そんなイメージを与えてくれる。こちらの建物は以前、外国人のファミリーが住んでいたそうで、天井の抜け感といいイレギュラーな空間の取り方といい、その自由度が伺える物件である。
天井が一番抜けているリビングスペースを共有の作業部屋にすれば、快適でスタッフの仕事の効率もあがるかもしれない。最上階の一室は集中するために籠る部屋、もしくは休息スペースにしてはいかがだろうか。光の射し込む窓は、景色が見渡せる屋上スペースにつながっている。ここで作業に没頭しても、一日の陽の傾きを感じられるので、仕事の合間に気が和らぐことであろう。ふつうのオフィス空間に飽きてしまった人。ふつうの住居に飽きてしまった人。できれば変わった空間をお探しの方に、ぜひ使いこなしてほしい空間である。
EDITOR’S EYE
ガレージに車が2台、外の玄関横のスペースにも1台分、車を停めることができる。車は必要ない、もしくは1台分あれば充分だという方は、ガレージの空間をカスタマイズして、さらなる1部屋として活用しても面白いだろう。