馬喰町オフィス | 戦前のヴィンテージビル
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古くから問屋街として知られる馬喰横山周辺。時代の流れと共に徐々に店舗が減りつつあるが、近年ではそれら跡地をリノベーションした面白い空間が増えつつある。そんな注目のエリアに、おそらくこの辺りでは最長齢と言える建物を見つけた。昭和5年竣工の満86歳。これまで戦争や幾度となく自然災害にも見舞われてきたはずだが、それらを乗り越えて今でもしっかりと建ち続けている。それだけでも奇跡のような建物だが、それを賃貸として募集しているのもまた奇跡といえるかもしれない。
問屋街すぐそばの交差点に建つ建物。そのコーナーに沿った3F-4Fが募集区画となる。エレベーターは無いのでアクセスは階段のみとなるが、レトロな雰囲気漂う階段室に心を躍らしながらのステップはそれほど苦には感じられなかった。室内はカーブする壁と連続窓が印象的なメゾネットの空間。3M弱の高い天井や白い塗装仕上げなど、それらの要素も加わり空間に広がりを与えている。内装の仕様はフロアによって少し異なり、3Fは明るめのフローリングと四角い窓。片や4Fは、シックで濃い目のフローリングとアーチ窓が特徴の空間となっている。フロアで明確に分かれているため、上下で異なる世界観を演出できるのも楽しめそうだ。なによりこの物件で驚きなのが、コンクリート技術が未熟だった時代に建てられたとは思えないクオリティーの高さ。もちろん定期的に補修などはされているだろうが、まだまだ若い者には負けないぞと言わんばかりの力強い表情をしている。職人の丁重な仕事にただただ感心させられる建物だ。もちろん建具などは年相応にきしみなどあるが、これはレトロ物件の醍醐味として大目に見てほしい。
中央区近代建築100選にも選ばれている歴史的な建物。長い会社の歴史の中で、一度はこのような物件に入居してみたいという方は多いはずだ。正直、ここまで歴史があると今後入居することも責任重大だろう。しかし、これまで長い間大事にこの建物を引き継いできてくれた人々に敬意を払い、ただレトロな建物に入居するだけではなく、86歳にも負けない力強いストーリーをもたせた使い方を考えていただきたい。例えお探しのエリアでないとしても、物件ありきでこのチャンスは見逃さないで頂きたい。
EDITOR’S EYE
建物はレトロだが、設備類は新しくリフォームされているのでご安心を。また、上下に専用の入り口やトイレもそれぞれ設置されているので、フロアごとに明確な使い分けができるのもポイントだ。建物内には創作イタリアンや美容室なども入っており、そこから漏れる香りを感じながらの出社というのもなかなか魅力なシーンだ。