EDIT
品のある邸宅や各国の大使館が多く建ち並ぶ麻布エリア。行き交う人々も国際色豊かで、どことなく異国に紛れてしまったような感覚すら与えられる街だ。エリア内には緑も多く、この建物の近くにも有栖川宮記念公園などがあり、周辺に住む人、働く人の憩いの場となっている。そんな環境に、まるでジブリ映画に出てくるような色気溢れる洋館を見つけた。隣接する大きな樹木や、地面に転がっているドングリなど、まるであいつがどこかに潜んでいそうな、そんなワクワク感を与えてくれる環境にその建物はある。
残念ながらまっくろくろすけは現れなかったが、黒い扉を開けると、期待を上回る興奮の空間が現れた。室内はレトロな洋館といった作り。築年数は不明だが、裏情報では恐らく60年以上は経っているようで、その時代に贅を尽くしたであろう室内の作りは、壁や建具、小さな鍵に至るまで、1つ1つのデザインや素材感がとても美しい。写真では伝えきれないのが残念だが、レトロ好きにはたまらない宝物がたくさん詰まっていた。室内は2層に分かれており、1階には玄関から直通のメインのワークスペースと、個々の作業スペースとして良さそうな小部屋が3つほど、その他水回りが展開している。ワークスペースは前テナントが残した間仕切りテーブルなどがあるが、もし必要がなければ撤去して、古くから残されている素材や空間性をうまく引き出すと良いだろう。
レトロな回り階段を上った先にある、大小2つの空間。こちらも空間のポテンシャルはなかなか高めだが、例えば床材を色合いの良い無垢フローリングなどに変えてあげればより空間の魅力が増しそうだ。さらにもう1部屋、極めて小さな部屋が奥に隠れている。小さすぎて写真にすら収まらなかったが、書斎のような1坪ほどの極小スペースで、渋めの木を基調とした室内には、外の緑がぼんやりと映る。1人でブレストを行なう時はこの部屋にこもると良い。きっととてつもないアイディアを引き出してくれるだろう。その他にも、各フロアーには隙あらば収納スペースを構えている。屋根裏のような隙間や階段の踊り場などにも。古い建物だからこそ、スペースを無駄無く使い尽くしているのもとても魅力的に映る。
現状は少々荒っぽく、入居の際は全体的に手を加える必要はある。しかし、他ではなかなかお目にかかれないこの希少な物件なら、手を焼かす事もすぐに愛着へと変わるだろう。このレトロな空間や素材を活かしつつも、これまでこの空間を引き継いで来た方々に敬意を払い、新たな感性を元にうまく後世に引き継ぐ空間に仕上げて欲しい。きっとそうやっていつまでもこの空間は残り、より深みを増して行く事になるだろう。
EDITOR’S EYE
ここでは説明しきれないほど多くの魅力が詰まったこの建物。個性ある物件をお探しの人にはまずオススメしたい物件だ。上記でも記載した通り、入居時には少々手は掛かるし、比較的奥まった立地なので良好とも言えない。きっと古い建物なので、使っていくうちに色々支障も出てくるかもしれない。しかし、この物件からはそんな不安をものともしない魅力を感じる。正直、未だ訪れた興奮は冷めやまない。