EDIT
青山学院に沿った静かな環境に建つこの建物。これまで専用住宅として使われていた為に世に出る事はなかったが、今回初めてそのチャンスが訪れた。表参道駅を背に青山通りを進み、骨董通りとの交差点を越えた1本目を左へ曲がる。オープン当時に大きな話題となった“The Pool”に向け青山学院大学に沿って道を進むと、程なくしてこの建物は現れる。このエリアではなかなか珍しい1棟の募集なだけに、まずはポジション勝ちの物件と言えるだろう。
元々2世帯住宅として作られているこの建物は、1-2F・3-4Fと2つの区画で分けられている。現況室内は住居仕様のまま残されているので、少々オフィスとしてイメージしにくい部分はあるが、作りだけ見ればなかなか楽しめる物件となっていた。全体的に濃い目の木を基調にした、渋めのテイストで仕上げられた室内。大きな書庫やレトロな書斎、レコーディングなどに使っていたのか防音室なども2カ所ある。オーナーの趣味やセンスを感じさせてくれる面白みのある部屋が点在していた。そんな中でも、特に興味深い空間なのが4階部分。この区画だけ個性的なドーム状の作りなっており、その丸みの帯びたその空間にいると、身体を包まれるようでどこか不思議な安心感を与えてくれる。どういう意図でこの作りになったかは不明だが、今後もこの空間が建物の顔となる事は間違いないだろう。物件としては面白いが、ワークスペースとしての目線に戻すと、このままではリアリティーが感じられないというのが正直なところだ。しかし、室内を創り込めるとなったら話はまた変わるだろう。
実はこの物件、内装工事自由という大きな特典が付いている。現状ではまとまったサイズの部屋が確保出来ないために、このままオフィスとして使うには少々難しそうだが、必要のない壁や部屋などを撤去し、ガッツリ内装を創り込めば見違える空間となりそうだ。もちろん最低限のルールや事前承認などは前提となるが、建物の新たなステージの門出としてとして、1棟丸々プロデュースしてみてはどうだろうか。
EDITOR’S EYE
隣の土地には、京都タワーや日本武道館など多くの有名建築を現代に残す、建築家・山田守の旧自邸がある。現在は1階をカフェとして運営しており、庭を囲うように開かれた店内はとても気持ちの良い空間だ。打ち合わせなどたまには気分を変え、この場をうまく利用するもの良いかもしれない。また、その庭にある大きな桜の木も、春に掛け周辺の雰囲気をより華やかにするだろう。