南麻布オフィス・店舗|天井高 スケルトン空間
EDIT
西麻布交差点から広尾方面へ外苑西通りを進む。この通りには、今なら建てられることもなさそうな奇想天外な建物が今でもいくつか残っており、バブル期の繁栄をリマインドさせるような町並みは、これはこれで道中の楽しみともなっていて面白い。そんな道を5分ほど道なりに進むと、左手になかなかの風格をもったレトロな建物が現れる。古き良きモダニズム建築を彷彿させるその面立ちは、好きな人にはたまらない建物だろう。
現在、そんな建物のベースとも言える1F・2Fが空いている。いや、空いているどころの話ではなく、1Fは壁すらない取り壊し中のような状態。よって、この区画を使うには、まずは壁を立てるという原始的な話になってしまうが、柵越えに望むその空間のポテンシャルはなかなか高そうだ。1Fに比べると、2Fはもう少しマイルドなスケルトン。と、見せかけ、残念ながらこちらも後方部分に大きな穴が空いており、開口面は雨ざらしの状態。果たしてこれらを貸し出していいものなのかと疑ってしまうほど、どちらも荒々しさが目立つ状態だが、逆にその何もない状態からは建物本来の純粋な空間を体験させられ、クリエイティブ心を強くくすぐる。特に2Fは、天井高4Mほどの大きな洞窟のような空間で、その空間を睨みつける特徴的な窓や、いい感じにヨレたコンクリート素地など、こんな空間を作り込んだらどれだけ面白いだろうと想像が止まらない空間だ。
普通に見ればほぼ廃墟。しかし、クリエイティブに思考をチェンジすると、こんなに遊び甲斐があって面白そうな空間はなかなかないかもしれない。もちろん1どころか、0の壁作りから始める必要があるため、それなりの覚悟で資金投入が必要となるが、サイズ感や利用用途の幅からも、様々な使い方、空間へチャレンジできそうな物件だろう。どのような使い方にせよ、できればなるべく真新しく作り込むよりは、あえてこの朽ちた世界観を活かして、粗々しく最低限の設備でラフな空間を作りこんでいただきたい。廃墟からのスタートも、なかなかロマンがあって楽しいだろう。何よりも、まずは壁を!
EDITOR’S EYE
店舗利用なども兼ねた場合、集客面では決して強い立地とは言えないが、この建物の存在、そのベースがより魅力的に生まれ変われば、人の流れを変えてしまうこともできるかもしれない。なにより2Fの空間は、個人的にはトップクラスに記憶に残る空間だった。