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東京の湾岸エリア。倉庫や工場、大型商業施設のイメージの強いこのエリアだが、東京オリンピックを控えた昨今、インフラ整備や商業エリアとしても注目されているエリアでもある。そんな湾岸エリアの比較的都心に近い、ゆりかもめ線の「日の出」駅。その駅前の湾岸通り沿いに元新聞社の印刷工場をデザイナーやアーティスト向けに、オフィスやアトリエにコンバージョンした複合施設があるはご存知だろうか。
ただ建物の用途を転用し改装しただけではなく、入居する多様な職業の人々同士がコミュニケーションできる空間を目指してコンバージョンされた建物。カフェやイベントスペース、共用フリースペースなど、コミュニティーの場所も予め用意されており、多彩な人々と多彩な機能の混在を促すようデザインされている。元々は工場として建てられているため、通常のオフィスビルのスケール感とはまるで異なるところもこの物件も大きな魅力だろう。もちろん使用感に問題がないよううまくリノベーションされているが、妙な違和感があるかもしれない。しかし、その違和感こそ、クリエイティブのもとになる大切な要素になるのではないだろうか。普通のオフィスに満足できない方にこそおすすめしたい。
交通の便が良く、性能の高いビルなど、都心には利便性の良いオフィスビルはいくらでもあるが、それでは満足しない企業やクリエイターの方たちが多く、その方たちが湾岸エリアをはじめとした古い建物や元倉庫等物件などをリノベーションしたオフィスが増えていることは事実であろう。企業がその場にオフィスを構え、発信していく。今でこそ世界に対してサービスや製品を提供することは技術的には容易になってきたが、そこで働きサービスを生み出す人々はこの場にいる。場という言葉は英語でも”ba”と呼ばれているが、移転の際に改めて、世界を通してオフィスの”ba”をじっくり考えてみる機会を持ってみてはいかがだろうか。
EDITOR’S EYE
建物には随所に元工場の名残が残されている。細部を見ていくと、所々にアートワークやサインアートが配置されていたり、荒々しい仕上げが大胆で格好いい。オフィススペースの壁は場所により素材感が異なっていたり、天井からのトップライトやむき出しのダクトや配線など、フォトジェニックな空間となっている。