南麻布の閑静な住宅街。駅から少々離れるものの、街に出ても電車に乗っても人で賑わう日常にメリハリをつけるには、思い切ってこんな場所を選んでもいいんじゃないかと思う。なぜならオフィスに居心地の良さが備わっているなら、少しの間籠もっているのもストレスにならないからだ。
人に会ったり街でアイデアを拾ったり、オフィスを離れる時はもうオフィスには戻らないつもりでメリハリをつける。オフィスにいる時間をぎゅっと濃くしてしまえば、時間の使い方が変わって働き方にも変化が起こりそうだ。

当物件はリノベーション空間。築46年の古さを感じさせない丁寧な仕上がりだが、部屋に入って肌で感じる柔らかい雰囲気は、古い建物だからこそ持つ独特の雰囲気、年を重ね角が取れたような丸さなんだ、と改めてリノベーション物件の良さを実感する。

木のアトリエを印象付けるのはチークのヘリンボーン柄のフローリング。一般的なワンルームの1室でもなく、リノベーション物件でもなく、シンプルな中にちょっとした愛嬌を感じる。
部屋の仕様を少し説明すると、天井のダクトレール照明はすべてLEDを使用しランニングコストも意識、エントランス部分の壁面はホワイトに塗られた杉板壁で、備え付けの可動棚の棚板も同様に杉板貼り。素材感が感じられるのはもちろんだが、こんなこだわりがあるからこそ空間全体に広がる木の薫りが心地良いのだろう。このようにリノベーションのこだわりは多くあるものの、あまり難しく考えず、感じたままにこの空間を働く場所にアレンジしてみたい。

正形のハコだからこそ、整然さを残した空間をつくりたくなる。
部屋の真ん中に長い一枚板のテーブルを。向かい合うスタッフはシンメトリーに座る。そうやってシンプルに整然と使いたい空間だ。