EDIT
表参道の交差点にほど近い南青山は、一歩裏手に足を踏み入れれば車や人の通りが多い表通りとは違い、自然と歩調が緩む場所だ。そのしっとり落ち着いた雰囲気にぴったりのこの清楚な建物は、まるでガラスキューブのよう。
潔いほどシンプルな外観にギャップすら覚える空間のやわらかさ。木張りの床とダウンライトの照明とのバランス感だろうか。そんな風に理屈っぽく説くのも少し野暮ったい気もする。それくらい肌感で「いると落ち着く」空間なのだ。
ただひとつ言えるのは、3層に分かれた建物の空間をつなぐこの階段。外階段にもなりそうな簡易なつくりなのだが、そのがっちりつくり込んでいない感じが空間同士の隔たりを少なくして、一体感すら出しているようだ。1階から3階まで途切れることなくつながっているのも、良い。その階段を眺めていたら、3階にいる人が階段を数段下りて2階にひょこっと顔を出す、そんな光景が浮かんだ。ダブルベッドの上で寝ている子が、下に寝ている子にちょっかいを出すような。
このアットホームなイメージのもとになるのは、米国のシェアアパート。バックボーンの違う同士が集まって同じ空間で生活をする。独立性を保ちながらもコミュニケーションが生まれていく。シェアアパートでいうところの“リビング”をこの空間にもつくれれば、コミュニケーションが主役のやわらかい雰囲気の中で仕事が楽しめそうだ。
EDITOR’S EYE
各フロア全く別々の仕事をしていても、この階段を人が行き来することでアットホームな空気感が生まれる。1棟で働くメリットは、意外にもこういった空間の独立性なのかもしれない。