EDIT
白金台駅のほど近く。ゆるやかに弧を描くその通りは、プラチナ通りと呼ばれている。青銅色の建物が目を惹いたり、中にツリーハウスのあるカフェがあったりと、感度の高いショップが並ぶこの通り。その雰囲気は独特で、用がなくともゆったりと散歩をしたくなってしまう。そんな素敵な通りを1本入ったところに、上品に佇んでいたのがこの建物だ。
階段を上りきったその先に、この部屋のためだけの踊り場がある。縦長のガラス部分から踊り場へ降り注ぐ、陽の光が気持ちいい。玄関扉は木製で、どことなく外国の執務室を思わせるような印象だ。扉の前からすでに品性が漂ってきて、無意識に背筋をピンとする。そーっと扉を開けてみると、ゆとりある玄関ホールが出迎えてくれた。入ってすぐ正面の壁は、お気に入りのアートや写真を飾るのにちょうどいい。室内にはふかふかの絨毯が敷きつめられていて、廊下の幅もなんとなくゆったりとしている。玄関ホールを右にゆくと、そこは30帖近くあるまとまった広さの一室。大きめの窓からの採光はバッチリで、窓と反対方向にある奥の扉は、キッチンにつながっている。ここから出てくるコーヒーはさぞ香り立つことだろう。ホールより左は、部屋が3部屋に分かれている。そして不思議なことに、浴室が2つあり、トイレに至っては3つ存在するのだ。何においても、この空間はとにかく寛大なのだ。
どんなものも一長一短。より都心に近付くと、流行りの最先端にいけるかもしれない。しかしここでは、新しいものを受容する心のゆとりは保ちつつ、いいものはずっといい、手放さず手入れをし愛着を持ち続ける、そんな文化がある。その洗練された価値観漂う街の中で、暮らしと仕事を両立させたなら、忘れかけていた心のゆとりも緩やかに取り戻されていくことだろう。
EDITOR’S EYE
すぐ近くに、2014年にリニューアルオープンした庭園美術館がある。広大な庭園を擁しており、本館独特の雰囲気は言葉で言い表すには足りない。それこそ今回のリニューアルでは古き良き部分は失われず、適正な手入れが施されてより魅力を増したようだ。都内の他の美術館とは一線を画すこの美術館。ぜひ一度訪れてみてはいかがだろう。