代官山オフィス・店舗|路面 スケルトン空間
EDIT
渋谷方面から代官山へと抜ける八幡通り。通り沿いにあるショップや飲食店は個性に溢れ、そこを歩く人々にも、代官山なりの感度が感じられる。流行の最先端という訳でないが、決して流行り廃りに左右されないポリシーすら感じさせてくれる様なビンテージマンションの1F区画。何とも気になる入口の扉に引かれ、その内部を訪れてみた。
通りに面してはいるが、間口の狭いこの空間。木製の引き戸を開け空間へ足を踏みいれると、入り口からは想像し得ない広がりにテンションが上がる。設備は一切無しの潔い程のスケルトン空間となり、窓も少なく天井も決して高くはない為、中々この状態をポジティブに捉える事は難しいかもしれない。初期の設備投資も覚悟頂く必要はあるが、荒々しさすら感じる現状でも、どこか興味を引かれる空間である事は間違いないだろう。
その理由の一つとして考えられるのが、以前までここが寿司屋だったという事だろうか。そう聞くと引き戸の扉にも合点が行き、活用のアイデアが膨らんでくる。入口の木製引き戸は変更可能だが、敢えて磨き上げ、オリジナルののれんを掛け、始業時と退勤時の日課はのれんの上げ下ろし。飲食も可能となるので、大きなカウンターを設けて訪れた人にはこだわりの緑茶を提供してみるのも面白い。夏の暑い日には入口周辺の細長い花壇部分を縁側に見立て引き戸を開け放ち、縁台を置いて風鈴の音で風情を演出してみれば、前を通る人も思わずのれんから顔を覗かせてしまうだろう。
立地やロケーションから考えれば当然こじんまりとした店舗がしっくりくるが、事務所兼用のギャラリーやショールームなどとも相性が良いのではないだろうか。これまでのストーリーを活かしつつ明確なコンセプトを持って、粋な利用にチャレンジしてみて欲しい。
EDITOR’S EYE
実は以前この場所にあったお店は、Sofia Coppola監督の「Lost in Translation」にも登場した寿司屋だったとの事。映画に登場した面影は残っていないが、なぜ気になるかが腑に落ちた気がする。賃料相場や初期投資がハードルとなるが、それでもこの場所を確保する価値は十二分にあるはずだ。